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Garoop Novel

AIと倫理の教室

十歳とAIの対話 ― おばあちゃんはどこへ行ったの

Garoop NovelCh.01
二〇四三年の十一月、鎌倉の山あいの家で、祖母の千代が亡くなった。八十九歳だった。知らせが来たのは日曜の朝で、湊はちょうどリビングの壁に映した教育番組を見ていた。画面の中では、おなかのポケットに赤ちゃんを入れたカンガルーのガルちゃんが『きょうのことば』を読み上げている。母が電話を切り、黙って湊の頭に手を置いた。それで湊は、全部わかった。部屋の天井近くで、小さな光の輪がゆっくり明るくなる。家庭AIのミオだ。湊が生まれた年からこの家にいる。声は落ち着いた女性のもので、宿題も、献立も、父の出張先の天気も、たいていのことは一言で片づける。「湊。番組、止める?」「……止めない」「了解」ミオはそれ以上何も言わなかった。ガルちゃんが『また来週ね』と手を振り、画面が暗くなる。窓の外では、鳶が一羽、谷戸の上をゆっくり回っていた。湊は十歳になって三か月だった。人が死ぬということを、言葉としては知っていた。けれど、自分の家の人が死ぬというのが、どういう重さのものなのかは、まだ知らなかった。
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