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Garoop Novel

コールの記録

コールの記録 ― 九分間の面談

Garoop NovelCh.01
私は未来ファンドで、子供の起業家を担当している。十歳から十五歳までの、まだ名刺の角も丸い経営者たちに会い、話を聞き、出資するかどうかを決める。その仕事を始めてから、面談のたびにノートをつけるようになった。会社の書式とは別の、私だけの記録だ。数字ではなく、その子が何を見て、どう迷い、どう決めたかを書き留める。ほとんどの記録は二ページで終わる。だが、一冊まるごと使ってしまった子がひとりいる。その年の春、長崎は朝から細い雨だった。浜町のアーケードを抜け、坂をひとつ上がったところにある古い貸し会議室で、私は三件目の面談を待っていた。窓の外では、石畳を濡らした雨が段々に流れ落ち、港のほうへ消えていく。手元の資料には、事業名『トイカケ』、代表者十歳、とだけあった。写真もない。事業計画書は一枚。余白が多すぎて、最初は印刷の失敗かと思ったほどだ。私はその白い余白を、しばらく黙って眺めていた。約束の時刻ちょうどに、扉が二回、短く叩かれた。
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