🕯️
Garoop Novel

コールの記録

コールの記録 ― 二票差の冬

Garoop NovelCh.02
相談の中身は、選挙そのものではなかった。クラスの男子のひとり、湊という子が、コールの選挙を手伝いたいと申し出たのだという。湊はトイカケの熱心なユーザーで、学童の端末で毎日問いを立てている。その湊が、こう提案した。「トイカケのログ見れば、みんなが学校の何に困ってるか、全部わかるやろ。それに合わせて公約つくれば、絶対勝てるって」コールはその言葉を、そのまま私に伝えた。「どう思いますか」と彼女は聞いた。私は少し考えた。事業の世界なら、それは『顧客の声を製品に生かす』と呼ばれる。悪いことではない。だが、ここは違う、と感じた。「ログは、何のために子供が書いたものか、だね」と私は言った。コールはうなずいた。「みんな、問いを立てるために書きました。私を選挙で勝たせるためじゃない。使ったら、トイカケは、私の選挙の道具になります」彼女は模造紙の二行目を指でなぞった。『子供の言葉を売らない』。「売らない、には、自分のために使わない、も入っています」湊には、その日のうちに断りを入れたという。湊は少しむくれたが、「まあ、コールらしいわ」と言ったそうだ。
2 / 8 ページ❦cole-kiroku-004