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Garoop Novel

ガルちゃん外伝

ガルちゃん外伝 ― 草原から長崎へ

Garoop NovelCh.01
乾いた風が、ニューサウスウェールズの草原を西から東へ撫でていった。夕方の光は赤く、ユーカリの影は長い。ガルちゃんは丘の上で後ろ脚を踏ん張り、耳を立てたまま地平線を見ていた。おなかのポケットの中で、ベビーがもぞりと動く。「ママ、まだ見張り?」「まだ。寝てていい」「寝られない。おなかすいた」「さっき食べた」「さっきは、さっき」理屈だけは一人前だ、と彼女は思う。群れの長老のバーグが、のそのそと丘を登ってきた。白い毛の混じった大きな雄で、若い頃は三つの谷を跳び越えたと自分で言っている。証人はいない。「報告を」「北の水場、半分まで減った。東の草は先週より短い。煙の匂いは、まだなし」「了解。次の満月まで持つか」「持たせる」バーグは鼻を鳴らし、それから少しだけ笑った。「お前は、言葉が短くていい」「長く話すと、ベビーが起きるので」シングルマザーになって二度目の乾季だった。夫の話はしない。群れの誰も訊かない。訊かないことが、この群れの優しさだった。ガルちゃんは、空の端にかかった薄い雲を見た。雨雲ではない。それでも、いつかは来る。来なければ、来る場所へ行くだけだ。
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