🕯️
Garoop Novel

ガルちゃん外伝

ガルちゃん外伝 ― 草原から長崎へ

Garoop NovelCh.03
三日後の昼、煙の匂いが来た。最初に気づいたのは、見張りの若い雌だった。「北西、煙」声が裏返っている。群れがざわめき、何頭かが南へ跳び出しかけた。南は開けた草地で、いちばん走りやすい。ガルちゃんは丘を駆け上がり、風を測った。頬に当たる風は北西から。強い。草は乾ききっている。南へ逃げれば、火は風に乗って追ってくる。開けた草地は、燃えやすい草地でもある。あの赤い帯を思い出した。エイミーの板が塗っていたのは、まさにこの風の通り道だった。「止まれ」大きな声ではなかった。それでも群れは止まった。「南は駄目だ。風下になる。東の川床へ。石が多い。草が少ない」「川は干上がってる」と誰かが言った。「だから行く。燃えるものがない」バーグがガルちゃんを見た。一瞬の沈黙。長老は短く言った。「従え」群れが東へ動き出す。最後尾に回ったガルちゃんの足元で、遅れた子供が転んだ。彼女は首根っこをくわえて立たせ、尻を鼻で押した。「跳べ。泣くのは向こうで」ポケットの中で、ベビーがしがみつく。「ママ、こわい」「こわくていい。ちゃんとつかまってろ」走りながら、彼女は一度も後ろを振り返らなかった。振り返る時間があるなら、前の子の数を数えた。
3 / 8 ページ❦garu-gaiden-001