🕯️
Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― ダンゴムシ作戦

Garoop NovelCh.01
十四時三十一分。長崎駅のすぐ裏手にある展示場の多目的ホールでは、三十人の子供たちが長机を囲んでいた。小学四年生、十歳の子ばかりを集めた一日限りのハッカソン。お題は「生成AIで、だれかを助けるアプリを作ろう」。ホワイトボードには付箋が貼られ、タブレットの画面には描きかけのキャラクターが踊っている。運営スタッフの柴田剛は、ホールの後方、非常口の脇に立っていた。四十八歳。二十年あまり陸上自衛隊にいて、三年前に退官した。今は長崎の小さなIT企業で総務をしながら、こうした子供向けイベントの安全管理を任されている。「柴田さん、顔がこわい」先ほど、Bチームの班長の結衣にそう言われた。笑ってみせたら、もっとこわいと言われた。柴田は、ホールの出口を数えるのが癖だった。正面に二つ、後方に一つ、非常口が二つ。階段は東と西。消火器の位置。子供の人数、スタッフの人数。誰も頼んでいないのに、頭の中で何度も確かめてしまう。窓の外では、細い雨が稲佐山を白くぼかしていた。そのとき、足もとから低い唸りが這い上がってきた。
1 / 8 ページ❦kinpaku-002