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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― ダンゴムシ作戦

Garoop NovelCh.07
十四時三十九分。東階段は暗かった。森下が先頭で懐中電灯を掲げ、柴田は最後尾についた。三十人の足音が、コンクリートの壁に反響する。二階の踊り場で、また床が揺れた。小さな余震。列が止まり、誰かが息を呑む。「止まれ。手すりを握れ。しゃがめ」短い号令に、列全体が同時にしゃがんだ。揺れは数秒で収まった。「立て。前進」誰も泣かなかった。柴田は列の後ろ姿を見ながら、自分が使っている言葉の短さに気づいていた。止まれ。握れ。しゃがめ。前進。かつて部下に向けていた言葉が、今は十歳の子供たちの足を動かしている。短い言葉は、冷たいわけではない。迷う時間を奪わないための、いちばんやさしい形なのだと、柴田は信じていた。十四時四十二分。一階の扉が開き、雨の匂いが流れ込んできた。屋外の広場には、すでに他の来場者が集まっていた。子供たちは班ごとに座り、班長が最後の報告をした。「Aはん、五人」「Bはん、五人。ぜんいん、げんきです」結衣の声は、もう震えていなかった。柴田は腕時計を見た。揺れから、ちょうど十分だった。
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