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Garoop Novel

未来ファンド審査室

未来ファンド審査室 ― 数字ではなく、振る舞いを見る

Garoop NovelCh.01
鎌倉、若宮大路から一本入った古い洋館の二階に、その部屋はある。扉の真鍮板には「未来ファンド審査室」とだけ彫られている。十歳前後の起業家に、最大で三百万円を投じる。決まりは一つ、事業計画書の数字だけで決めないこと。午前九時五十八分、楕円の机に四人の審査員がそろった。窓際の霧島凛は元陸上自衛官で、背筋は定規のように伸び、手元のノートにはまだ日付しか書かれていない。その隣で湯呑みを両手に包んでいるのが円城慈道、二十年を寺で過ごしたのちに還俗し、投資家になった男だ。向かいの波多野宗一郎は三期務めた元市議会議員で、ネクタイの結び目がいつも少しだけ緩い。最年少の佐伯ミナトは生成AIの研究所から来たエンジニアで、ノートPCを閉じたところを誰も見たことがない。そして議長席の横、記録用のタブレットを抱えて立っているのが、議事進行補佐のガルちゃんだった。カンガルーである。おなかのポケットからは、ベビーが耳の先だけを出して眠っている。「定刻です」とガルちゃんが言った。霧島が腕時計に目を落とした。「始める」――それが、この部屋のいつもの最初の言葉だった。
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