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Garoop Novel

コールの記録

コールの記録 ― 上書きしない答え

Garoop NovelCh.05
話が一段落したかと思ったところで、私のスマートフォンが震えた。未来ファンドの別部署からの転送だった。ある大手の教育関連企業が、トイカケの対話ログを買いたいと言ってきている。匿名化した上で、子供向けAIの学習データにしたい、と。金額は、今のトイカケの年間予算の三倍だった。私はそれをそのまま伝えた。担当者として、伝えない理由はなかった。コールは最後まで聞き、一度だけ目を閉じた。「名前を消しても、言葉は残ります」と彼女は言った。「さっきの女の子の『かみさまは、ほんとうにいるの?』も、男の子の『へん?』も、ログに入っています。それを、知らない大人が、知らない機械に食べさせる」「匿名だよ」「匿名でも、あの子が書いた言葉です」短い沈黙のあと、彼女は言った。「お断りします。理由は、模造紙の二行目です」私は壁を見た。『子供の言葉を売らない』。面談の日に断られた提案のことを、私は思い出していた。あのときもそうだった。彼女は、お金と原則を同じ秤に載せない。
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