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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 公開ボタンの前で

Garoop NovelCh.08
二十三時四十分。安全層の修正が終わり、五百件の再検証がすべて通った。小野寺は会議室の床で寝息を立てている。ノートパソコンには、ポケットから子供をのぞかせたカンガルーのステッカーが貼られていた。灯は自販機で温かいお茶を二本買い、一本を早瀬に渡した。「明日の朝九時に公開でいいですか」「ああ」早瀬はキャップを開けずに、缶を両手で包んだ。「真壁。あの十分間、怖くなかったのか」「怖かったですよ」「そうは見えなかった」灯は少し考えて、答えた。「怖いのと、判断できないのは、別のことなので」早瀬は笑って、それ以上は聞かなかった。いつでも正しく動ける人間など、そう多くはない。何を見て、何を捨て、誰のために決めるのか。張りつめた十分間でも声を荒げず、場が切れそうな瞬間にだけ冗談を置く。その置き方まで含めて、あれは判断力だった、と早瀬は思った。正しいことを、正しいやり方で選べる人間が、自分の隣にいる。この会社がこの先どうなっても、彼女がこれからどこまで行くのかは、見届けたかった。
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