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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― ダンゴムシ作戦

Garoop NovelCh.04
十四時三十四分。柴田は森下に、手順を三つだけ渡した。「一、余震が来たら机の下。二、俺が戻るか、館内放送があるまでここで待機。三、エレベーターは使わない。復唱」森下が繰り返した。声がまだ上ずっている。柴田はそこで、結衣のほうを見た。机の下から這い出して、班員の肩に手を置いている。「結衣」「はい」「森下さんの副官をやれ。泣いてる子がいたら、隣に座って手を握らせろ。それだけでいい」「わかった」十歳の子に任せる仕事ではない、と頭のどこかで声がした。だが柴田は知っていた。災害の現場で、子供を一番落ち着かせるのは、大人の大声ではなく、同じ背丈の誰かの手だ。十年前、熊本の避難所で見た光景だった。柴田は懐中電灯を取って、廊下へ出た。非常灯の緑が、床に長い影を落としている。天井のパネルが一枚、斜めに垂れていた。その下を避けて走る。トイレのドアの前で、柴田は一度だけ声を落とした。走ってきたことを、子供に悟らせないために。「颯太。柴田だ。いるか」
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