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Garoop Novel

未来ファンド審査室

未来ファンド審査室 ― 線はどこに引く

Garoop NovelCh.01
六月の終わり、鎌倉は三日続けて雨だった。洋館の二階、未来ファンド審査室の窓ガラスを、細い雨粒が斜めに伝っていく。ガルちゃんは議長席の横で、記録用のタブレットとは別に、表紙の擦り切れた小さなノートを抱えていた。夜ごとに続けている生成AIの勉強ノートだ。仕組みを覚えるたびに図を描き、分からない言葉には赤い丸をつける。ポケットの中では、ベビーが雨音を子守唄にして眠っていた。「今日の応募者は一名です」とガルちゃんが告げる。「葛西蓮、十一歳。東京・月島在住。事業は、生成AIで作る『その子だけの絵本』。注文した家の子供の名前と好きなものを聞いて、物語と挿絵をAIで作り、一冊ずつ製本して届けます。三か月で注文は四十件」佐伯ミナトが、めずらしく自分からノートPCの画面を皆に向けた。「応募書類に、全注文の生成ログが添付されています。使った指示文、つまりプロンプトが全部」波多野宗一郎が眉を上げる。「全部」「全部です。募集要項に『使った道具は隠さず見せること』と書いたのは、うちのほうですから」霧島凛は黙って書類をめくっていた。
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