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Garoop Novel

AIと倫理の教室

十歳とAIの対話 ― やめておけと言わないAI

Garoop NovelCh.04
最初の土曜日、公民館に来たのは一人だけだった。祖母の家の二軒隣の、田村さんという元漁師の老人だった。そして、田村さんは五分で怒り出した。「子供に教わることなんかない。わしは機械が嫌いなだけだ」湊は用意してきた説明の紙を握りしめたまま、何も言えなかった。ナディアが青い顔をしている。大翔でさえ黙った。イヤーピースが、ごく小さく鳴った。「湊。状況を報告して」「お客さんが、怒ってる」「了解。一つだけ。説明するのをやめて、聞いて」緊迫した場面ほど、ミオの指示は短くなる。湊はそれを、葬儀の日から知っていた。湊は紙を机に置いた。「田村さん。家のAIに、本当は、何を聞きたいですか」田村さんは口を開きかけて、閉じた。窓の外で、蝉が鳴いていた。長い沈黙のあと、田村さんはぼそりと言った。「……死んだ女房の、ぬか床の作り方。あいつ、どこにも書き残さなかった」湊はナディアと大翔を見た。二人とも、黙って頷いた。説明の紙は、その日、一枚も使わなかった。
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