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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 公開ボタンの前で

Garoop NovelCh.01
二十時五十分。五反田の雑居ビル七階、窓のない会議室のモニターには、公開まで残り十分を示すカウントダウンが白く光っていた。子供向けの学習AI「なぜなにポケット」。十歳前後の子供が声で質問すると、生成AIがやさしい言葉で答えてくれる。社員十二人のスタートアップが、二年かけて磨いてきた最初のプロダクトだった。CTOの真壁灯は、冷めたコーヒーを一口だけ飲んで、ログの流れる画面に目を戻した。隣の部屋では代表の早瀬が、配信用のカメラの前で原稿を読み返している。二十一時ちょうどに公開ボタンを押し、その瞬間をライブで流す。出資元である未来ファンドの担当者も、画面の向こうで見ているはずだった。そのとき、ドアが乱暴に開いた。「真壁さん」QA担当の小野寺が、ノートパソコンを胸に抱えて立っていた。二十四歳、入社半年。普段は会議でもほとんど声を出さない青年が、肩で息をしている。「見てください。さっきから、おかしいんです」灯は椅子ごと向き直った。「結論から」「本番のモデルが、嘘を言ってます」会議室の空調の音が、急に大きく聞こえた。
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