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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 赤い空の群れ

Garoop NovelCh.02
十二月の終わり。ニューサウスウェールズ州の内陸にある、小さなカンガルー保護区。ユーカリの林と乾いた草地に囲まれて、四十頭ほどのカンガルーが暮らしていた。世話をしていたのは、マギーという六十代のレンジャーだった。日に焼けた腕と、短い白髪と、いつも少しだけ音程の外れた鼻歌。その日、朝から空がおかしかった。太陽が赤い円盤になり、昼なのに夕方のように暗い。風が熱く、灰が雪のように降っていた。マギーの無線が、ひっきりなしに鳴っている。「十五時十二分。西の尾根を越えた。風速は」「北西、強い。十五分以内に風が変わる見込み」群れはざわついていた。若いオスたちが、意味もなく柵の周りを跳ね回る。ガルちゃんはポケットのお兄ちゃんを抱えるように腹を丸め、群れの端に立っていた。まだ若い母親だった。リーダーでもなんでもない、ただの一頭。けれど、ガルちゃんには一つだけ、ほかのカンガルーにない癖があった。毎朝、マギーの無線を、柵の陰でじっと聞いていたのだ。人間の言葉の意味は半分もわからない。それでも、声の調子と、繰り返される単語は覚えていた。
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