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Garoop Novel

未来ファンド審査室

未来ファンド審査室 ― 数字ではなく、振る舞いを見る

Garoop NovelCh.02
その朝、会議の前に一度だけ小さな衝突があった。波多野が、控室に財布を一つ落としておいてはどうかと言ったのだ。拾って届けるかどうかで、人柄はすぐに分かる、と。冗談半分の口調だったが、半分は本気だった。霧島は顔も上げずに答えた。「却下」「なぜです」「子供を試すな。見ろ」それきりだった。円城が湯呑みを置いて、ゆっくりうなずいた。仕掛けた罠で人を量れば、量った側の倫理観が先に削れる。審査する者がずるをすれば、審査そのものが嘘になる。霧島はそれを説明しなかったが、説明しないことで、かえって全員に伝わった。波多野は頭をかいて「失礼」とだけ言った。引き際の早さは、この男の美点だった。最初の応募者は小野寺ひなた、十歳。長谷の路地に住み、小町通りの商店に「置き傘」を置かせてもらう事業をしている。雨の日に一本百円で借り、駅前でも鶴岡八幡宮の近くでも、加盟した店ならどこに返してもいい。書類には、加盟店が十一軒とあった。ガルちゃんが扉を開けると、紺色のワンピースの少女が、背丈に合わない大きな封筒を抱えて立っていた。
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