🕯️
Garoop Novel

未来ファンド審査室

未来ファンド審査室 ― 数字ではなく、振る舞いを見る

Garoop NovelCh.04
四つ目の質問に入ろうとしたとき、天井から甲高い音が鳴り響いた。火災報知器だった。佐伯が反射的にノートPCを抱え、波多野が腰を浮かせる。霧島だけが、最初から立っていたかのような速さで扉の前にいた。「避難。東の階段。走るな」「了解」とガルちゃんが答え、タブレットの名簿を開いた。「ガル、人数」「審査員四、応募者一、控室に次の応募者一、保護者二です」「確認しながら降りろ」ひなたは、テーブルの上の封筒にもスライドにも目をやらなかった。廊下に出ると、控室の扉が半分開いていて、八歳くらいの男の子が椅子の上で固まっていた。次の応募者だ。付き添いの母親は手洗いに立っていて、まだ戻っていない。ひなたは迷わず部屋に入り、男の子の前にしゃがんだ。「手、つないでいい」男の子がうなずく。ひなたは彼の手を引き、壁際を歩いて階段へ向かった。段差のたびに「ここ一段」と小さく声をかける。踊り場で、手洗いから飛び出してきた母親と行き合い、ひなたは男の子の手をそのまま母親に渡した。報知器はまだ鳴っている。ガルちゃんのポケットの中で、ベビーが目を覚ました。
4 / 8 ページ❦mirai-fund-001