🕯️
Garoop Novel

コールの記録

コールの記録 ― 上書きしない答え

Garoop NovelCh.06
「代わりに、こうします」とコールはノートパソコンを開き直し、指を走らせた。仕様の変更は四つだった。ひとつ、宗教・信仰・食の習慣・家の行事に関わる問いには、AIは評価を下さない。『それは、あなたの家ではどう考えている?』『おうちの人に聞いてみたら、教えてくれるかも』と、問いを家に返す。ふたつ、どの信仰も、信仰を持たないことも、同じ重さで扱う。みっつ、対話ログは三十日で消える。子供本人が、自分のログを見て、消すボタンを押せる。よっつ、ログを誰かに渡すときは、その子と保護者の両方に聞く。そして、売らない。「三つ目は、利益が減ります」と私は言った。改善のための分析ができなくなるからだ。「減ります」とコールはうなずいた。「でも、子供が『消せる』と知っていれば、もっと正直に問いを書きます。正直な問いのほうが、いいデータです」それは冗談だったのかもしれない。だが彼女は笑わなかったし、私も笑わなかった。倫理観と事業の計算が、彼女の中では喧嘩をせずに並んでいた。
6 / 8 ページ❦cole-kiroku-002