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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 公開ボタンの前で

Garoop NovelCh.03
二十時五十三分。早瀬が会議室に入ってきた。ジャケットの襟を直しながら、壁の時計と灯の顔を交互に見る。「何があった」灯は要点だけを三つ並べた。誤情報が出ている。原因は特定済み。修正には四十分かかる。早瀬は短く息を吐いた。「選択肢は」「三つ」灯は指を折った。「一つ、予定通り公開して、四十分後に修正を当てる。二つ、健康と安全に関する質問だけ遮断して公開する。三つ、公開を延期する」「二つ目は、いけるのか」陣内が首を振った。「分類器も同じ安全層の上で動いてます。遮断の判定そのものが当てにならない」早瀬は窓のない壁を見た。その向こうには、配信を待つ数百人の視聴者と、取材に来た記者が二人と、二年分の約束がある。「延期したら、記事は『公開失敗』になる」「なるでしょうね」「未来ファンドの次のラウンドにも響く」「響くでしょうね」灯の声は平坦だった。早瀬がこちらを見た。怒っているのではない。迷っているのだ、と灯は思った。迷っている人間に必要なのは、正論の大声ではなく、判断の材料だった。
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