🕯️
Garoop Novel

AIと倫理の教室

十歳とAIの対話 ― やめておけと言わないAI

Garoop NovelCh.06
七月三十日の夜、応募書類は完成した。動画も撮った。田村さんが出演してくれた。最後の欄に、ミオが質問を一つ出した。「この会社がうまくいかなかったら、どうする?」湊はしばらく考えてから書いた。理由を記録して、次に生かす。反対意見も残す。送信ボタンを押す前に、湊は聞いた。「ミオ。結局、一回も、やめておけって言わなかったね」「言う理由が見つからなかった。見つかりかけたことは三回ある」「いつ」「お金のとき。安全のとき。田村さんが怒ったとき」「でも言わなかった」「三回とも、湊たちが自分で越えた。私が止める前に」ミオの声は、報告のときと同じ平らさだった。湊はその平らさが、少しだけ誇らしそうに聞こえた気がした。湊は送信ボタンを押した。画面に、未来ファンドの受付完了の文字と、跳ねるガルちゃんの小さなアニメーションが出た。八月の第二週、面談の案内が届いた。オンラインで十五分。審査員は三人。湊は、その日の朝、トーストを半分しか食べられなかった。母がその残り半分を黙って食べ、湊の肩を一度だけ叩いた。
6 / 8 ページ❦ai-kyoshitsu-003