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Garoop Novel

ガル軍曹の起業塾

ガル軍曹の起業ブートキャンプ ― 入隊、五百万円の誘惑

Garoop NovelCh.08
消灯は二十一時だった。湊は寝つけず、水を飲みに廊下へ出た。職員室だった部屋の明かりが、ほんの少しだけ漏れていた。のぞくと、キャップを脱いだカンガルーが窓辺に座り、ポケットの中に向かって小さく子守歌を口ずさんでいた。朝礼の声とは、まるで別の生き物みたいに柔らかい声だった。湊が後ずさった拍子に、床がきしんだ。「……消灯後の徘徊。名前」「湊です。水を」「三秒以内」「水を飲みに来ました」「よろしい」。軍曹はキャップをかぶり直そうとして、やめた。「湊。今日、五百万円を書かなかったな」「紗良が止めたので」「止められて、止まれる者は少ない」。窓の外で、港の灯りが揺れていた。今日あの四人が試されたのは、タブレットの腕前ではなく、倫理観だった。勝てそうな嘘と、地味な本当のどちらを選ぶか。十歳の湊はまだ、その言葉を知らない。「明日も五時半だ。寝ろ」「了解」。部屋に戻る背中に、ほとんど聞こえない声が届いた。「……よくやった」。湊は振り返らなかった。振り返ったら、軍曹が困る気がしたからだ。
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