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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 公開ボタンの前で

Garoop NovelCh.07
二十一時。配信が始まった。早瀬はカメラの前で一礼し、手元の紙を見ずに話した。「なぜなにポケットの公開を、延期します。直前の確認で、子供に間違った答えを返す不具合が見つかりました。熱が出たときの薬の量。宗教に関わる質問への、断定的な答え。どれも、子供に渡してはいけない答えです。原因は特定しています。安全が確認できるまで、公開しません」三行より長かったが、弁解には聞こえなかった。コメント欄が流れはじめる。楽しみにしてたのに、という声。正直でいい、という声。ベンチャーはこれだから、という声。灯はそれを一つずつ読まなかった。読むべきは別の窓だった。未来ファンドの担当者、桐生からのメッセージが、二十一時三分に届いた。『配信、拝見しました。十歳の子供の未来に投資するファンドとして、今夜の判断に出資したことを誇りに思います。再開の日程が決まったら教えてください』早瀬がその画面を、黙って灯に向けた。灯は小さく頷いて、また設定ファイルに戻った。陣内が隣で、接続の張り直しを始めていた。
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