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Garoop Novel

緊迫の十分間

緊迫の十分間 ― 公開ボタンの前で

Garoop NovelCh.05
二十時五十六分。小野寺のキーボードを打つ手が震えていた。陣内は黙ってモニターを睨み、広報の三浦は告知文の下書きを二種類、両方とも開いたまま固まっている。部屋全体が、張りつめた弦のようだった。誰かが一言間違えれば、そこで切れる。灯はそれを感じ取って、わざと椅子の背にもたれた。「ひとつだけ、いい知らせがあります」全員がこちらを向いた。「このAIは少なくとも、今この部屋の誰よりも自信がある」一拍の間があって、陣内が吹き出した。三浦が口元を押さえ、小野寺の肩から力が抜けた。早瀬までが、苦笑いのような顔をした。灯は笑いが消えきる前に、言葉を継いだ。「自信だけある答えを、子供の前に出すわけにはいかない。延期です」笑いのあとの静けさは、さっきまでの沈黙とは違う種類のものだった。早瀬が目を閉じ、開いた。「――わかった。延期する。ただし配信はやる。二十一時に、俺がカメラの前で理由を話す」「了解」灯はすぐに立ち上がった。冗談は、言いすぎれば軽くなり、足りなければ届かない。今夜のさじ加減は、たぶんあれで足りていた。
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